私はかなり変わっていて、何よりも質感を大切にします。
量より質、質感の薄いもので出来た便利さや快適さよりも、質感のある不便さを迷うことなく選んでしまいます(笑)。
京都移転の際も町家をあれこれ迷うことなく(迷ってる時間的余裕もございませんでしたが)、即決でした。ご縁と言いましょうか、もちろんあれこれ希望はありましたが、皆が皆オンボロと言うような物件を選んだのでした。外見(外装)も内装(キッチン等)も綺麗にリノベされた物件が他にございましたが、私はなんかそれらに魅力を感じませんでした。便利でしょうし、隙間風もなく快適そうですが(笑)、味わいをあまり感じませんでした。私が選んだ物件に初めて内見をさせていただいた時、ネットの写真よりも味があり、ほっこりするような、そして私を待っていてくれたかのような温かみを感じました。私はあれこれリノベするつもりでいましたが、なんだか初めて室内に入った時に、これはあまりいじらない方が良いとも感じました。傾いているし、隙間だらけ、あれこれ変なとこいっぱいなのですが、それでも気にすることなく即決でした。土壁の感じや、建具類の経年変化した様、全てではございませんが、かなり多くのところが味わいに満ちているのでした。やきものも一緒ですが、素材の良さみたいなものが残っていることが重要で、なんか便利快適小綺麗でも、素材感が薄いと魅力的に感じないし、飽きてしまうということを仕事柄強く意識しているのだと思います。また、小さな奥庭にはもみじの木があり風情がございました。他の物件では取ってつけたようなと言っては失礼ですが、なんか庭らしくないと言いましょうか、ピンと来ませんでした。どんなに小さくてもそれなりの庭があることは、都会のコンクリートジャングルで育った私には魅力的で、贅沢に感じるものです。もみじの木一本を取るか、快適なキッチンを選ぶか、両方あれば最高なんですが、なかなかそんな簡単にうまいこと行かないのが世の常。”腐っても鯛”などと言っては失礼ですが、少し手を入れただけで良い雰囲気になる京町家は、流石だなと満足しております。とにかく落ち着く空間です。ぜひご来店ください。
この町家で暮らしていくことは、私の人生にとりましても大きな変化であり新たな挑戦です。
100人いたら98人はNo Thank you ! というようなことでも、気にすることなく突き進む。価値観って不思議ですね。

(写真は2階と奥庭のもみじの木)